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Sun rays shine through the clouds as dusk approaches.
Sun rays shine through the clouds as dusk approaches. Credit: Peter Tsai Photography / Alamy Stock Photo.
GUEST POSTS
30 June 2021 13:35

ゲスト投稿:低い「気候感度」が除外できた理由

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06.30.21
Guest postsゲスト投稿:低い「気候感度」が除外できた理由

国際的な科学者チームが 4 年間かけて詳細な議論を重ねた結果、大気中 CO2濃 度の増加に対する世界の地表温度の応答を、これまで以上に正確に定量化することができました。

Reviews of Geophysics 誌に掲載された今回の成果は、「平衡気候感度」(ECS)の推定値の 幅を狭めるものです。ECS とは、大気中の CO2濃度が産業革命以前の水準の 2 倍になっ た場合に、世界がどれだけ温暖化するかを示す指標です。

1979 年に米国の気象学者 Jule Charney 氏が、1.5°C~4.5°Cの幅の可能性を示唆して以来、 ECS の推定値の幅を狭めることは気候科学の最重要課題となっています。その推定幅の主 な根拠となったのは、世界初の 2 つの全球気候モデルで、大気中の CO2濃度を 2 倍にする という単純な実験を行ったところ、それぞれ 2°Cと 4°Cという異なる値が得られたことでし た。

それ以来、40 年以上の研究や大気プロセスの理解の向上、そしてより詳細な観測にもかか わらず、この幅はずっと変わっていませんでした。

今回、観測された温暖化、地球の遠い過去ならびに気候モデルから得られた証拠、そして気 候に関する科学的理解の進展をまとめると、ECS の幅は 2.6℃から 4.1℃の間である可能性 が高いことがわかりました。

このように不確実性の幅が狭まったことで、人類社会が、気候感度が低いということを理由 として、悠長に気候変動に取り組むことができなくなりました。しかし、この悪い知らせの 反面にある良い知らせは、今回の研究結果が、非常に高い ECS の推定値は可能性が低いこ とも示唆していることです。

頑ななまでに広い幅

大気中の CO2 濃度の増加に対して、地球の気候がどの程度敏感に応答するかは、気候科学 の基本的な問題です。地球の地表温度が、人為的に排出された CO2 に応答してどの程度上 昇するかは、本質的にこれによって決まります。

大気中の CO2濃度は、産業革命前の 280ppm から、現在では約 416ppm にまで増加してい ます。排出量を削減しなければ、2060 年頃には産業革命前の 2 倍となる 560ppm に達する 可能性があります。

しかし、ECS の推定幅は頑なに広いままでした。2007 年に発表された IPCC(気候変動に 関する政府間パネル)第 4 次評価報告書(AR4)では、ECS は 2.0℃から 4.5℃の間とな る「可能性が高い」(IPCC の用語では 66%以上の可能性)と結論づけられました。これに より、2℃を下回る可能性は低いと示唆され、ようやく一定の成果が得られたことが示され ました。

しかし、2013 年に発表された IPCC の第 5 次評価報告書(AR5)では、この改善が一転し て、従来の 1.5℃〜4.5℃の幅の「可能性の高い」推定値に戻ってしまいました。

なぜ戻ってしまったのか?2000 年代以降、ECS の推定値は気候モデルだけでなく、過去の 気候の研究(「古気候学」)や、観測された過去の気温変化の解釈、さらには気候のフィード バックプロセスの研究からも推定されるようになりました。

AR5 が執筆された時点では、観測された気温変動に基づく ECS の最良推定値は 2℃前後で した。一方、プロセスの理解とモデリングによる推定値は、Charney の幅の上限を支持して いました。両者の範囲は重なっていましたが、 測された気候変動に基づく推定値と、気候 感度を支配するプロセスの理解とモデリングに基づく推定値との間に、このような乖離が あることは憂慮すべきことでした。

2013 年以降、科学者たちは、なぜ推定値が異なるのかについての技術的な詳細を理解し、 さまざまな証拠から得られた異なる推定値を調整するための最初の一歩を踏みだすよう、 協調的な努力を行ってきました。

今回の研究では、異なる独立した証拠が互いにどのように関連しているかについての理解 が深まったことで、これらの証拠を正式に組み合わせて、これまでのどの総合評価よりも強 い制約を ECS に与えることができるようになりました。

可能性の高い幅

今回の研究では、ECS の「可能性が高い」範囲は 2.6℃から 4.1℃で、最良推定値は 3℃を 若干上回る程度と考えられます。この幅の外では、ECSが2℃以下になる可能性は5%以下、 4.5℃以上になる可能性は 6~18%となります。

また、ECS とは少し異なる指標である「有効気候感度」の推定値を 2.6〜3.9℃としました。 (ECS は、CO2 濃度が 2 倍になった後、気候が平衡状態に達した場合の温暖化予測値です。 気候が本当に平衡状態に達するまでには数千年 かるため、評価やシミュレーションが現 実的でない場合があります。「有効気候感度」はこの問題に対処するもので、典型的には CO2 を 2 倍にしてから 150 年後の温暖化を外挿します)。

一見すると、これは前回の IPCC 報告書から大幅に改善されたようには見えないかもしれ ませんが、実際には、気候科学の理解や、21 世紀の温暖化の予測の幅に対する私たちの自 信についての重要な意味を持っています。

下の図は、今回の研究で得られた ECS の推定幅(黒と灰色)と、AR5(青色)、第 5 次(黄 色)および第 6 次(オレンジ)結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP)の推定範囲を比 較したものです。(CMIP5 のモデル予測は AR5 に反映され、CMIP6 は次の第 6 次評価報 告書(AR6)に反映されます)。

Range-of-ECS-from-the-new-study
ECS の幅。新しい研究のベース(黒)とロバスト(灰色、有効感度を示す)の両方の結果、前回の IPCC 評 価報告書(AR5、青)、前世代の気候モデル(CMIP5、黄)、新しい CMIP6 気候モデル(オレンジ)。Sherwood らの論文と AR5 については、可能性の高い気候感度(66%の幅)を太いバーで、可能性の非常に高い感度 (90%の幅)を細いバーで示す。Carbon Brief が Highcharts を用いて作成。

私たちの研究では、まず、それぞれの証拠がどのようにして可能性の高い ECS に制限を設 けることができるのか、あるいは制限を設けることができないのかを判断し、説明すること で、より狭い範囲を作り出しています。私たちは、フィードバックプロセスの理解、気温変 化の歴史的観測データ、過去の気候変動の古気候復元という 3 つの異なる証拠を精査しま した。

次に、3 つの推定値を正式に統合すると,ECS の推定値の中心が 3℃よりやや高い値になり ました。また、ECS の幅についても、2.3℃から 4.7℃の間である可能性が 90%というさら なる制約が得られました。これらの証拠のいずれか一つを抜いたり、別の統計的手法を用い たりすることにより得られた、「頑健な」有効気候感度推定値は 2.0℃から 5.7℃の間になり ます。

これらの制約により、今回の研究で直接の証拠としては用いられなかった気候モデルによ る推定値と、この推定幅を比較することができるようになりました。ある気候モデルの ECS がこの範囲に比べて高い場合、ある排出経路のもとでの将来の温暖化レベルを過大評価す ると予想されます。同様に,ECS の値がこの幅より低い場合,将来の温暖化を過小評価す る可能性があります。

証拠を組み合わせる

大気中 CO2 濃度の上昇に対して地球がどのように応答するかにおいて、フィードバックプ ロセスが重要な要素となります。フィードバックには、地球の温暖化を促進する正のフィー ドバックと、温暖化を抑制する負のフィードバ クがあります。例えば、温暖化によって氷 や雪が溶けると、地表における太陽光の反射率が下がり、吸収率が上が て温暖化がさらに 進みますが、これは正のフィードバックです。

私たちは、観測、理論、詳細なシミュレーション、気候モデルから得られた証拠を検証しま した。私たちの分析によれば、ECS の推定値が2℃以下の値を取るには、が地球温暖化 について負のフィードバックを与えることが必要なのですが、一方で雲が負のフィードバ ックを与える可能性は非常に低いことがわかっています。したがって、この証拠だけで、 1.5℃より低い ECS の推定値を除外することができます。

これまでに観測された温暖化も、さらなる証拠となります。CO2 濃度がまだ 2 倍になって いないのに、すでに約 1℃の温暖化が起こっているのです。このことから、ECS の値が 2℃ 以下になる可能性は非常に低いと考えられます。しかし、大気汚染や火山などによるエアロ ゾルの冷却効果を定量化することは難しく、また、フィードバックプロセスがここ数十年の 間には、長期的に予想されるものとは異なる動きをしていた可能性があることから、この観 測された温暖化から ECS の良い推定値を得ることは困難です。そのため、過去のデータだ けで ECS の高い値を除外することは極めて難しいのです。

古気候は、私たちが検証する 3 つ目の証拠です。地球の遠い過去に自然に発生した気候変 動も、十分な情報があれば ECS を制約する助けとなります。最も有効な情報が得られる時 代は、最終氷期の極大期(約 2 万年前)で、現在よりも約 3℃から 7℃寒かったことと、約 300 万年前の鮮新世中期の温暖な時期(現在よりも約 1℃から 3℃暖かかった)の 2 つであ ることがわかりました。最終氷期の極大期における寒冷化の限界は、ECS の値が高い可能 性が低いことを示す単一の証拠としては最良のものです。

ECS に対するこれらの制約は、一連の証拠を組み合わせることでより強固なものとなり、 複合的な証拠によって ECS の高い値や低い値を除外することができるようになりました。 高い ECS 値を除外する:もし真の ECS の値が 4.5℃以上であれば、雲のフィードバックは 衛星データで示唆されているよりもはるかに増幅効果が大きいことになります。また、将来 のフィードバックも、過去の期間よりもずっと増幅効果が大きいことになります。さらに、 氷床の変化や最終氷期の最盛期の乾燥した状態での塵の堆積は、著しく過大評価されてい た必要があります。

低い ECS 値を除外する:真の ECS の値が 1.5℃以下の場合、予想外の強力な雲の冷却フィ ードバックプロセスが新たに発見される必要があります。また、過去の期間におけるエアロ ゾルによる気候の冷却効果はほぼゼロあるいはむしろ加熱効果に寄与していた必要があり ます。さらに、鮮新世中期に推定された温暖化は過大評価されている必要があります。

私たちは、一連の統計的検定を行うことで、すべての証拠が間違っている可能性を検討しま した。また、特定の証拠への依存度も評価しました。たくさんの計算とビデオ会議での議論 を重ねた後、これらのテストから最終的に論文で紹介する ECS の範囲を決定することがで きました。

下の図は、各証拠の結果を個別に示したもので、各ボックスは有効気候感度の 50%の可能 性の幅を示しています。

The-50-percent-likelihood-range-of-effective-climate-sensitivity
各証拠から独立して算出された有効気候感度の 50%の可能性の幅。過去の観測のみに基づく推定値の上限 はほとんど制約ができず、8℃以上であることに注意。図は Sherwood ら(2020)の図 20 を基に Carbon Brief が Highcharts を用いて作成した。

モデルとの比較

この記事の最初の図では、CMIP6 モデルのなかには、論文で示された ECS の幅の上方にも 下方にも外れているものがあることを示しました。

我々の研究によれば、ECS の幅の外側のモデルは、真の ECS を代表しているとは考えにく く、したがって、将来の気温変化を過大評価または過小評価することが予想されます。 しかし、今回の研究は決定的なものではなく、特に ECS の上限値は下限値に比べて十分に 制約ができていないため、高い値の統計的な余地がまだあります。したがって、今回の研究 では、これらの高 ECS のモデルを決定的に除外することはできません。

さらに、他の研究では、ECS の値が高いシミュレーションは多くの点が改善されているこ とがわかっています。したがって、将来のリスクを評価する際に、これらの高 ECS モデル を含めることは、有用な予防策であることに変わりはありません。

国立環境研究所 訳。 Sherwood, S. et al. (2020) An assessment of Earth’s climate sensitivity using multiple lines of evidence, Reviews of Geophysics doi.org/10.1029/2019RG000678

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